はじめに
ベトナムの会計・税務コンプライアンスは、外資系企業にとって期限内の申告だけではありません。契約、電子インボイス、銀行決済、会計帳簿、移転価格文書および説明資料の内容を整合させる必要があります。本稿では、2026年の主要な実務ポイントを初めて進出する企業にも分かりやすく解説します。
重要ポイント:投資優遇を受けられることが、そのまま税務優遇を意味するわけではありません。優遇税率、免税・減税または控除を適用するには、所定の要件、証憑および区分経理を満たす必要があります。
1. 会計制度と財務諸表
ベトナムで設立された会社は、ベトナム会計法令に従って会計帳簿を作成し、財務諸表を作成する必要があります。法定報告では引き続きVASが一般的な基準です。IFRS・VFRSへの移行は正式な決定および実施ガイダンスに基づいて確認すべきであり、2026年1月1日からすべての企業にVFRSが義務化されたと理解することは適切ではありません。
外資系企業では、ベトナム法令対応のVAS財務諸表に加え、連結報告のためにIFRSまたはグループ会計基準への調整を行うことが一般的です。両基準間の調整表を明確に保存することが重要です。
| 項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 報告基準 | VASおよびベトナム会計法令 |
| 言語 | ベトナム語(併記可) |
| 会計通貨 | VNDまたは要件を満たす外貨(届出が必要) |
| 会計年度 | 12か月。暦年または法令上認められる期間 |
| 監査 | 外資系企業の年次財務諸表は原則として法定監査の対象 |
2. 法人所得税(CIT)
2025年法人所得税法では、業種・地域・プロジェクトに対する優遇税率に加え、年間売上高に応じた税率が設けられています。15%または17%を適用する前に要件と除外事由を確認する必要があり、低税率または優遇税率が適用されない場合の一般税率は20%です。
| 売上高・区分 | 税率 | 留意点 |
|---|---|---|
| 30億VND以下 | 15% | 適用要件および除外事由を確認 |
| 30億VND超~500億VND以下 | 17% | 売上高の判定方法を確認 |
| 一般 | 20% | 低税率・優遇税率が適用されない場合 |
| 優遇プロジェクト | 該当する優遇税率 | 業種・地域・プロジェクト・区分経理の要件あり |
対象となる多国籍企業グループは、ベトナムの適格国内最低トップアップ税(QDMTT)および関連申告を確認する必要があります。7億5,000万ユーロの連結売上高基準は、ベトナム法人単体ではなく、決議第107/2023/QH15号に基づきグループ全体で判定します。
要件を満たす中小企業が初めて企業登録を行う場合、政令第20/2026/NĐ-CP号に基づく3年間の法人所得税免除を受けられる可能性があります。すべての新設会社に自動適用される制度ではなく、組織再編、転換および関連者に関する除外要件の確認が必要です。
3. VATと電子インボイス
VATの標準税率は原則10%です。2026年中は、対象となる商品・サービスについて10%から8%への軽減が2026年12月31日まで適用されますが、除外対象には各税率が適用されます。会社の全売上に一律8%を適用せず、取引ごとに分類する必要があります。
1回の購入に係るインボイス金額が500万VND以上の場合、法定の例外を除き、非現金決済証憑は仕入VAT控除および法人所得税上の損金算入における重要な要件です。割賦・後払い取引では、契約上の支払期日も管理する必要があります。
電子インボイスは、政令第123/2020/NĐ-CP号、政令第70/2025/NĐ-CP号および関連ガイダンスに従い、適切な時点で発行し、必要事項を記載し、訂正または差替えを行います。データ送信方法はインボイスの種類と適用方式によって異なるため、すべての取引が完全なリアルタイムで報告されるとの表現は正確ではありません。
4. 個人所得税(PIT)
税務上の居住者は原則として全世界所得に課税され、非居住者は法令に従いベトナムに関連する所得に課税されます。居住性は滞在日数と恒常的住居を基準に判定し、該当する場合には他国の居住者であることを証明できるかも確認します。
2026年課税年度から、本人控除は月額1,550万VND、扶養控除は扶養親族1人当たり月額620万VNDです。居住者の給与所得には累進税率が適用され、非居住者の給与所得には原則20%の税率が適用されます。
| 区分 | 課税範囲 | 取扱い |
|---|---|---|
| 居住者 | 全世界所得 | 給与所得に累進税率 |
| 非居住者 | ベトナム関連所得 | 給与所得は原則20% |
5. 外国契約者税(FCT)
外国法人がベトナム企業との契約に基づき事業を行い、またはベトナム源泉所得を得る場合、FCTが発生する可能性があります。税率は取引の実質、申告方法および契約条件によって異なり、インボイス上の名称だけでは決まりません。
ソフトウェア取引では、使用許諾・ロイヤルティ、ソフトウェアサービスおよび付随サポートを区別する必要があります。みなし法人所得税のみが課されVATが非課税となる場合や、課税サービス部分を区分すべき場合があります。契約にはグロス・ネット価格と納税負担者を明記します。
| 支払区分 | 参考税率 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 一般サービス | VAT 5%+CIT 5% | 取引実態と納税方法を確認 |
| 支払利息 | CIT 5% | VATは通常不適用 |
| ロイヤルティ | CIT 10% | VATは取引内容による |
| ソフトウェア | 分類が必要 | 使用許諾・サービス・サポートを必要に応じ区分 |
6. 移転価格と説明資料
親会社、関連会社または支配関係のある者との取引がある会社は、関連者取引の申告、ローカルファイル、マスターファイルおよび国別報告書の要否を確認する必要があります。価格方針、契約、インボイスおよびサービス提供実績の証拠を整合させます。
7. 申告スケジュールと内部統制
期限は税目、申告方法および課税期間によって異なります。単一の日付に依存せず、会社別のコンプライアンスカレンダーを作成することが重要です。期限日が休日に当たる場合は、税務管理法令に基づいて期限を判定します。
| 期間 | 目安期限 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 月次 | 翌月20日 | 月次申告の場合のVAT・PIT |
| 四半期 | 翌四半期第1月の末日 | 四半期申告が認められる場合 |
| 法人所得税の予定納付 | 四半期ごと | 年間確定税額に対する納付割合を管理 |
| 年次確定申告 | 会計年度終了後3か月目の末日 | 財務諸表および法人の確定申告 |
| 個人の自己確定申告 | 暦年終了後4か月目の末日 | 本人が直接申告する場合 |
まとめ
ベトナムの会計・税務は、契約、インボイス、銀行記録、会計帳簿および税務申告が相互に説明できる継続的なデータ管理として運用すべきです。TT Collabは、税務ストラクチャーの確認、会計業務の調整、税務調査前の資料点検および実務的な申告カレンダーの整備を支援します。
主な法的根拠
- 会計法第88/2015/QH13号および関連ガイダンス。
- 法人所得税法第67/2025/QH15号、政令第320/2025/NĐ-CP号、通達第20/2026/TT-BTC号。
- 付加価値税法第48/2024/QH15号および改正法、政令第181/2025/NĐ-CP号(政令第144/2026/NĐ-CP号による改正を含む)。なお、第3項で触れた2026年12月31日までの8%軽減税率は、決議第204/2025/QH15号および政令第174/2025/NĐ-CP号を別途の根拠としています。
- 政令第123/2020/NĐ-CP号(政令第70/2025/NĐ-CP号による改正を含む)、通達第32/2025/TT-BTC号。
- 個人所得税法第109/2025/QH15号、国会常務委員会決議第110/2025/UBTVQH15号。
- グローバル最低税に関する決議第107/2023/QH15号。
- 外国契約者税に関する通達第103/2014/TT-BTC号。
- 税務管理法第108/2025/QH15号および関連ガイダンス。
| 免責事項:本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に関する会計・税務助言ではありません。具体的な適用は、事業内容、規模、所在地、関連者関係および所管当局の指針によって異なる場合があります。 |
