ベトナム駐在員事務所:2026年設立・コンプライアンス完全ガイド

はじめに

駐在員事務所は、外国法人がベトナムで本格的な事業会社を設立する前に、市場調査、取引先ネットワークの構築、契約履行の監督を行うための有効な選択肢です。組織が比較的簡素で最低法定資本金もありませんが、ベトナム国内で直接売上を計上することはできません。

現行法上、主な法的根拠は外国法人の駐在員事務所・支店に関する政令第07/2016/ND-CP号です。また、政令第146/2025/ND-CP号等により、関連手続は省級行政機関へ分権・分級されています。申請前には、予定所在地を管轄する省・市が公表する最新手続を確認する必要があります。

1. ベトナム駐在員事務所が適しているケース

駐在員事務所は、ベトナムで直ちに販売や有償サービスを行う必要はないものの、市場情報の収集や現地パートナーとの連絡拠点を必要とする企業に適しています。

比較項目駐在員事務所(RO)有限責任会社(LLC)
法的性質外国企業に属する組織であり、独立した法人ではないベトナムで設立された独立法人
一般的な最低資本金最低法定資本金の定めなし一般的な最低額の定めなし。ただし、業種別要件が適用される場合あり
売上計上不可許可された事業範囲内で可能
法人所得税・VAT事業収益を得られないため、通常、販売活動に起因する税負担は発生しない実際の事業、所得、商品・サービスに応じて適用
許可処理期間有効な申請書類一式の受理後、原則7営業日。実際は長くなる場合あり業種、投資家および投資・企業登録手続により異なる
適した目的市場調査、連絡、事業機会の促進、契約履行の監督販売、サービス、製造、輸出入および売上計上

販売契約の締結、VATインボイスの発行、顧客からの代金受領、有償サービス、製造または輸出入を直接行う必要がある場合、駐在員事務所は適していません。その場合は、有限責任会社など、実際の事業に合う進出形態を検討すべきです。

2. 活動範囲:できること・できないこと

駐在員事務所は、連絡、市場調査および外国法人の投資・事業機会の促進に限って活動できます。すべての活動は設立許可証の範囲内で行い、直接利益を生むものであってはなりません。

活動分野可能不可
調査・連絡市場調査、取引先との連絡、情報収集、法令の範囲内でのブランド紹介商品の販売、仲介、有償サービス
契約外国法人が締結した契約の履行状況を追跡・監督RO名義で収益を生む商業契約を締結
財務運営資金を受領し、適法な事務所経費を支払う販売代金の受領、VATインボイスの発行、利益分配
人事・運営従業員の雇用、事務所の賃借、RO運営に必要な物品の購入製造、加工、組立
輸出入外国法人の取引に関する情報提供・監督輸出入または商品流通を直接実施

所長は、ROの適法な運営に必要な契約を締結できるほか、有効な委任状がある場合には外国法人を代理できます。ただし、委任によってROが収益事業を行えるようになるわけではありません。

3. 2026年の設立許可要件

要件確認内容
外国法人の法的地位外国法に基づき適法に設立・登録され、当該国の法令により認められていること。
事業実績設立または登録日から1年以上事業を行っていること。
残存有効期間登記証明書に有効期間がある場合、申請日から少なくとも1年以上残っていること。
予定する活動範囲ベトナムの国際約束に適合すること。適合しない場合、専門機関への照会が必要となることがある。
RO所長兼任禁止に該当せず、外国人の場合は必要な労働・在留関係書類を備えること。
所在地適法な使用権限があり、土地、建築、安全、治安および建物用途の要件を満たすこと。

4. 必要書類

必要書類は、外国法人の設立国や申請先の省級行政機関によって一部異なる場合があります。一般的には次の書類を準備します。

書類実務上のポイント
設立許可申請書現行様式を使用し、外国法人の権限ある代表者が署名。
会社登記証明書等有効なもの。免除される場合を除き領事認証を行い、ベトナム語翻訳・認証が必要となるのが一般的。
直近事業年度の活動証明監査済財務諸表、納税・財務義務の確認書、または同等の証明書類。
RO所長の任命書署名権限および代表範囲を明確にする。
所長の旅券・身分証明書有効な写し。必要に応じて労働・在留手続書類も準備。
所在地に関する書類賃貸借予約書または契約書、賃貸権限および建物用途を示す書類。

外国発行のすべての書類が一律に領事認証の対象となるわけではありません。書類の種類、発行国、適用される国際条約に応じて、領事認証、認証および翻訳の要否を個別に確認する必要があります。

5. 設立手続と所要期間

ステップ手続内容目安期間ポイント
1設立要件と所在地の確認3~7日事業内容、外国法人の登記残存期間、建物用途、所長の適格性を確認。
2領事認証・翻訳・申請書類の作成1~3週間以上発行国および領事認証免除の有無により異なる。
3省級の権限ある機関へ申請所在地で公表された手続による通常は商工局または省級人民委員会から指定された機関が処理。
4設立許可証の審査有効な書類一式受理後、原則7営業日補正または専門機関への照会が必要な場合は延長されることがある。
5許可取得後の手続約1~3週間税務、印章、銀行、労務、看板、活動開始通知等を個別に実施。

上記は事業計画のための目安であり、行政機関の処理期間を保証するものではありません。通常、外国書類の準備、所在地の確認および申請書類の補正に最も時間がかかります。

6. 許可取得後に行う手続

手続主な内容
税務登録税務番号を取得し、個人所得税の源泉徴収・申告その他の税務義務に対応。
印章外国組織の駐在員事務所に適用される現行規定に従って手続。
銀行口座外国法人から運営資金を受領し、適法な費用を支払う専用口座を開設。売上受領には使用しない。
看板・活動開始通知許可証と一致する看板を設置し、地方手続で必要な場合は活動開始を通知。
労務・在留雇用契約、社会保険、労働許可または免除、査証、在留カード等を必要に応じて実施。
書類保管許可証、外国法人資料、賃貸借契約、従業員資料、経費証憑、委任状を適切に保管。

7. 税務・労務・定期報告

ROは事業を行えないため、通常、販売活動に伴う法人所得税や売上VATは発生しません。ただし、「すべての税金が免除される」という意味ではありません。従業員の個人所得税、社会保険、取引内容に応じた源泉徴収・申告義務などが生じる場合があります。

義務期限・周期ポイント
年次活動報告翌年1月30日まで前年の活動を許可発給機関へ報告。2年連続未提出は許可取消しの根拠となり得る。
個人所得税状況に応じて月次または四半期、年次確定申告ROが従業員の税金を源泉徴収・申告・納付するのが一般的。
強制社会保険加入対象者が発生した後、社会保険法上の期限内ベトナム人・外国人それぞれの加入対象を正しく確認。
労働許可・在留各書類の有効期間による期限切れ前に更新手続を行う。
登録情報の変更法定期限内に許可証変更手続所在地、外国法人名、所長、活動内容等の変更を確認。

8. 許可期間、更新および活動終了

駐在員事務所設立許可証の有効期間は最長5年ですが、外国法人の登記証明書等の残存有効期間を超えることはできません。要件を引き続き満たす場合は更新できますが、更新は自動的な権利ではなく、各更新期間にも法定上限が適用されます。

活動を終了する場合、外国法人は権限ある機関への終了手続を行い、税務、労務、契約、銀行口座その他の義務を完了する必要があります。実際の事務所を閉鎖するだけでは、法的な終了とはなりません。

9. 外国企業がよく犯すミス

・実際には販売・請求が必要であるにもかかわらずROを選択する。
・建物用途が不適切、または賃貸人に適法な賃貸権限がない。
・「7営業日」をプロジェクト全体の所要期間と誤解する。
・所長が兼任禁止に該当する、または労働・在留書類が不足している。
・法人所得税/VATが通常発生しないことを、すべての税務義務の免除と誤解する。
・1月30日までの年次報告や、変更時の許可証変更手続を失念する。

まとめ:駐在員事務所は自社に適しているか

駐在員事務所は、市場調査、連絡、事業機会の促進、外国法人の活動監督を目的とする場合に有効です。一方、ベトナムで直接販売、有償サービス、営業チームの運営および売上計上を予定している場合は、ROの制限内で無理に運営せず、会社設立を検討すべきです。

TT Collabは、外国企業の市場参入形態の検討、要件・所在地の確認、許可申請書類の作成、税務・労務・年次報告体制の構築を支援します。最初に適切な形態を選ぶことで、将来の組織変更コストとコンプライアンスリスクを抑えることができます。

主な法的根拠:商法第36/2005/QH11号、政令第07/2016/ND-CP号、政令第146/2025/ND-CP号、政令第139/2025/ND-CP号、通達第38/2025/TT-BCT号、付加価値税法第48/2024/QH15号、社会保険法第41/2024/QH15号および関連施行規則。

免責事項:本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、個別案件に対する法務・税務上の助言ではありません。申請機関、提出方法および実務上の要件は、所在地、外国法人の設立国、業種、適用される国際条約によって異なる場合があります。申請または活動開始前に最新規定を確認し、専門家へご相談ください。

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